第5回(2023年2月16日掲載)
明けましておめでとう御座います!早いものでこちらに来てから2回目の年越しとなりました。
まずは嬉しいご報告から。昨年の10月にこちらの研究室から論文を出すことができました。ご指導いただいている先生は元より、研究室の仲間、何より家族の協力があってのことだと思います。頑張りが認められたのかは分かりませんが、現在は3つのプロジェクトに関わらせていただいております。その内のひとつは九州大学眼科学教室とのコラボ研究ですので、帰国までに何とか形にしたいと思っています。また、プロジェクトが増えるに従って改めてコミュニケーションの大切さを痛感しています。これは言われたことを正確に実行することもそうなのですが、自分の意見をきちんと相手に通す、主張をする上でより重要だと考えます。
クリスマスシーズンは週末を利用してNYへ行ってきました。人生で初めてだったのですが、自分が憧れた映画の中の世界がそこにはありました。NYがあるマンハッタン島は観光をする上で大きさもちょうどよく、普段車で移動しているロサンゼルスと比較して、メトロでの移動も非常に便利に感じました。クリスマスの飾り付けはどこも美しく、ワクワクした気持ちにさせてくれました。
年越しはLas Vegasで行いました。年末は18時くらいから”Las Vegas Blvd. (boulevard; 大通り)”が歩行者天国となります。23時30分くらいに通りに出ると既にたくさんの人が。例年ですと大型の電光掲示板でカウントダウンが始まり、0時ちょうどに通り沿いのホテルから花火が上がります。しかし、60秒のカウントダウンが始まったのは23時58分。時間を間違えていたようです。いかにもアメリカっぽい。
留学も残り1年間。プロジェクトが増えたこともあり、最近は週末も研究室へ通っています。年末も30日まで、年始も1日から仕事始めでした。夢の9-17時生活は何処という感じですが、帰国後にやりたいことも見つかりましたので、最後まで走り抜けたいと思います。
第4回(2022年10月17日掲載)
円安が止まりません。現在、1$=142.5円(9/10/22現在)。私が渡米した1年前が1$=109円(9/11/21)と考えるとその上昇率が実感できるかと思います。幸いにもこちらのラボから給与をいただいておりますので、まだ心の平静を保てておりますが、もし自分の蓄えだけで生活を支えていたらと想像したらゾッとします。今回は1年という節目でもありますので、「留学は人生を豊にするのか?」という命題について、留学生活を行ってきた今だからこそ再度考えてみたいと思います。
経済面― 多くの人が”No”だと思います。ただし、こちらでは研究評価を正しく給与に反映していただけます。研究をすることで給与をいただけるというのは、やはり今でも新鮮です。自分の中で確実にモチベーションとなっていますし、責任感も生じます。
経験面― 勿論これは”Yes”です。異国の地で生活するということは、それだけで財産になると思います。楽しいことばかりではないですし、言葉が上手く伝えられずに悔しい思いをすることもありますが、全て自分の血肉となっています。将来に対して不安がないわけではありません。ふとした瞬間に自分の臨床能力や手術について考えることはあります。ただ色々考えても仕方がないので、帰国後は覚悟を持ってやります。
では、留学の一番の醍醐味は何か。それは間違いなく「出会い」だと思います。なにも海外の人たちだけではありません。こちらに留学されている日本人の先生達との出会いも非常に大切です。同じ眼科とはいえ、普段そこまで話すことのない他大学の先生たちと家族ぐるみの付き合いをすることで、どのように学問に取り組んでいるか、疾患や病態をどう捉えているかなど、本当に多くのことを学ぶことができます。これは自分にとって凄く大事な財産になると考えています。
最後に、そんな出会いの写真を一つ。先日、大阪大学からご留学中の後藤 聡先生の計らいで、名古屋市立大学名誉教授の小椋 祐一郎先生とお食事をご一緒する機会に恵まれました。研究の話や趣味の話などを肴に、小椋先生の手料理とワインを堪能させていただきました。この場を借りて厚く御礼申しあげます。本当に有難う御座います。こういう出会いを重ねていけることが、何より「留学」「研究」の醍醐味だと思っています。
第3回(2022年6月27日掲載)
お久し振りです。といっても、オンラインでの講演会にはちょくちょくご参加させていただいています。オンラインが普及して有り難い反面、きっかけとなったCOVID-19の影響がまだまだ残っていることには複雑な心境です。
さて先日、年に一度の眼科国際学会 ”ARVO2022 in Denver” に参加してきました。当初は飛行機で向かう予定でしたが、同時期に留学されている筑波大学眼科の星先生ご家族と相談し、国立公園巡りをしながら車で往復することにしました。計約40時間弱、こちらに来て初めての ”Road trip” です。 ”Death Valley National Park” から始まり、 ”Zion National Park” 、 ”Arches National Park” 、 ”Grand Canyon National Park” と巡りました。こちらの自然はやはり広大で圧巻でした。スケールが違います。写真ではどうしても伝わりにくい部分もありますので、是非!国立公園目的で旅行に来ることをお勧めします。
肝心の学会ですが、やはり例年と比較してポスター発表も少なく、少し寂しい感じでした。但し、”in person”で会話できるのは最高に素晴らしく、留学中の先生達と食事会を開き、親交を深めることができました。来年は日本から同門の先生にお会いできることを楽しみにしています。
こちらで素晴らしい業績を出された先生達とお話すると、自分の経験は帰国後どう繋がってくるのだろうかということを考えます。中々にしんどい課題ですが、最近になりようやく答えが見つかりそうです。また、どのような形になるかは分かりませんが、「留学生活応援基金」を立ち上げ、後輩の支援をしたいと考えています。その為にも先ずは、自身が充実した留学生活を送れるように今後も楽しみたいと思います。
第2回(2022年3月17日掲載)
先月、オンラインの勉強会にて「留学準備編」についてお話させていただきましたので、今回はこちらでの生活について触れたいと思います。
研究日は月曜日から金曜日、朝9時からスタートします。17時頃には人がいなくなりますが、火曜日から木曜日にかけては娘のプリスクール(幼稚園)の送迎がありますので4時半過ぎには研究室を後にしています。土日も細胞管理のために顔を出すようにしていますが、他のメンバーが来ることはありません。こちらで土日働くと”crazy”と思われがちです。
週末は家族と一緒にLA周辺を巡っています。住んでいる場所から1時間半から2時間の場所もありますが、この距離感にも慣れてきました。Google Mapsでランチを探して、ここから15分だし近いなと思っても、Freeway(無料の高速道路)で一山越えて隣町ということがよくあります。
また、今月から水曜日夜にサッカーを始めました。週末家族で行った公園で、たまたま隣のグラウンドでやっていて、混ぜてもらえることになりました。しかもお声掛けした人がたまたま映画監督で、こちらの国際映画祭や日本のFilm Contestの審査員をやられているらしく。これぞLAといった感じです。
留学への葛藤(2022年1月4日掲載)
留学について様々な意見があります。ある先生からは、「心は温まるかもしれないが、懐は温まらない。」「海外に住みたいならば老後に行った方がいいのでは?」「今後開業を考えているならば留学なんか意味がない。」など言われました。全てが真実だと思いますが、全て経験していない人の言葉でもありました。当然これは逆も然りで、留学を選択しなかった場合の真実は私には分かりません。
ただ、COVID19で留学を諦めてしまったら、死ぬ時に絶対に後悔すると思いました。お金は後からでも稼げます。ただ、「経験と若さ」は後から取り戻せません。別の長年開業している先生からは、「留学しておけば良かった。」という後悔の念を伝えられもしました。ただ、何が正解は個人によって違いますし、分かりません。
そして漸く、2021年9月に留学できることになりました。これもワクチンを開発した研究者の皆様、そして園田教授をはじめとする九大眼科医局のサポートのお陰です。
次回からは留学先での生活や楽しさ、そして苦しさについても記していこうと思います。
COVID19の大流行(2021年12月24日掲載)
さて、いよいよ2020年より留学となった際に、皆さんご存知のCOVID19の大流行が始まりました。年末年始までは、まだ対岸の火事といった気分だったのですが、瞬く間に世界中に広がりました。LAだけでも現在までに26,000人(10/12現在)近くの方が亡くなっています。
当然、留学の延期を余儀なくされ、石川先生からも「これ留学いけないのではない?」と言われました。自分自身も留学するのに迷いが出てきて真剣に悩みました。いつ終わるか分からない状況の中、大学で外来診療に取り組んでいましたが、もう留学を諦めて臨床に復帰し手術をした方が自分の眼科医人生にとってはいいのではないだろうか、そもそも留学の意義はなんだろうかと考えもしました。
留学先を決める!(3)(2021年12月17日掲載)
そんな中、私が慕っている旭川医大の石羽澤先生に強烈な一言をいただきました。
「根拠なき留学はすべきではない」
と。石羽澤先生自体、Tufts大学に1年間留学していた経験があり、色々な話を聞かせてもらいました。また、求めていく留学よりも求められていく方が研究しやすいのではないかという思いもありました。
さらに、アメリカには現在義理の弟夫婦がテキサス州に駐在していること、実は自分が中学生時代に西海岸にホームステイした経験があったことです。その時のカリフォルニアの青い空と、夏なのに冷房要らずのカラッとした気候を今でも覚えています。
そういった縁も頭をよぎり、UCLAに留学することを決めました。さらに不思議なもので、ビザを取得しにアメリカ領事館(九州では福岡のみ)を訪ねたところ、大学時代の同期と10年ぶりに再会しました。この10年間一度も会ったことはなく、連絡も取っていなかったのですが、彼も同時期にUCLAにて2年間留学予定だそうです。
留学先を決める!(2)(2021年12月10日掲載)
そのような折、以前より当教室の先輩方が留学していたUCLA(University of California, Los Angeles)のDoheny Eye Instituteから研究者を探していると、石川 桂二郎先生を通じて話が来ました。この研究室は私が大学院にて行ってきた仕事と近く、経験をそのまま持っていけるというメリットがありました。また、雇い主のRam先生に何度もオンラインミーティングをしてもらい、具体的な実験内容についても話をしました。こういったご縁は全て先輩方が作ってきた歴史の賜物だと思っています。
さて、UCLかUCLAかどちらかを選択しなければなりません。自分の中では、憧れのイギリスか、現実のアメリカか。色々な方に相談しました。もし、自分にもっと自信があれば、もしかしたら誰にも相談せずに決断していたかもしれません。これは決して今の選択を後悔しているわけではなく、大学院時代は限られた時間の中で結果を出さなければならず、暗闇の中をメンターの先生に手を引いてもらいながら研究を進めており、留学先で、自分独りでやっていけるのか自信がなかったからです。
留学先を決める!(1)(2021年12月3日掲載)
さて、留学するには留学先を決めなければなりません。前述のように、私は以前からイギリスへの憧れを公言し、そのことを私のメンターである中尾 新太郎 先生も汲んでくれていました。しかし、当教室からは近年イギリスへの留学者はおらず、そのため山口大学の木村 和博教授や神戸大学の楠原 仙太郎先生を通じて留学先候補を紹介してもらいました。しかしながら、なかなか条件面で折り合いがつかず、このまま大学院卒業まで話が進まないのではないかと心配していました。
そのような状況で、UCL(University College London)の眼科directorであるAndrew Dick教授が九州大学主催の研究会に演者として来日しました。こういった機会に巡り合えるのも当教室ならではで、懇親会の際にPC片手にDick先生へ突撃しました。ご家族で来ていたのですが私のために時間を作ってもらい、私の身振り手振りの拙い英語に耳を傾け、私の大学院での仕事を聞いてもらいました。
その後、現在留学先を探していることを伝えたところ、UCLのPete Coffey教授を紹介してもらいました。Pete教授とは教室として助成金を取得できれば給与付きで雇ってくれるという話になりました。
序(2021年11月19日掲載)
今回より、園田教授のご発案により留学の日々を日記としてHPに掲載いただけることになりました。今回は記念すべき第1回目の寄稿なのですが、全ての物語には始まりがあるように、私の留学生活にも始まりがありますので、まずは留学に至った経緯について記していきたいと思います。
留学というと、何だか凄いことをしているように聞こえますが、私が留学をしようと決めた理由はあるフットボールチームの存在です。研修医時代、応援していたイングランドプレミアリーグのチーム”Chelsea FC”が初めて欧州一となりました。小さい頃からドラマ「フルハウス」等を見て、海外に住むという漠然とした憧れがありましたが、このことをきっかけに憧れが目標となりました。また、留学という形であれば、仕事をしながら海外にも住めるし一石二鳥ではないかと軽い気持ちで考え、眼科入局後に大学院進学を決めました。これは私の死生観にも繋がっている部分ではありますが、限りある命であれば色々なことを経験したい、チャレンジしたいと思いが強くあり、そのことも後押しの一因となったと考えます。